旅番組で紹介される映像を通して
さまざまの国のお国柄に触れることが、私の日常の大きな楽しみの一つになっています。それでも、大抵は、観るだけで満足してしまい、自分で出かけてみようという気持ちにまでは至らないことが多いのですが、十数年前のテレビで紹介されていたギリシャのミコノス島とイタリアのアルベロベッロにだけは何故か特別の思い入れを抱くようになり、「いつかは必ず行ってみたい。」という夢を抱くようになっていました。
念願のギリシャの島への‘旅’は4年前に実現しました。ギリシャの島の、言葉には尽くせない素晴らしさは、私のかねてよりの想像をはるかに上回るものでしたので、アルベロベッロとていかばかりかと・・・、募る思いは年々膨らむ一方でしたが、実現のチャンスは、現実的にはなかなか巡ってはきませんでした。それが、今年になって、私の気持ちを後押ししてくれるように、急に、気運が高まって種々の条件が整い、アルベロベッロが近づいてきたのです。
ギリシャの時と同様に、今回のアルベロベッロへの‘旅’のデザインもパーパスジャパンの神野藤さんにお願いしました。が、7日間の旅の中味を最終的に、「これでOK!」と納得のいくものに決定できるまでには、数え切れないほどのメールのやり取りを重ねさせていただいたのでした。
イタリアのお国事情には疎いくせに、「ああしたい!」「こうしたい!」という思いだけはパンパンに膨らんでいましたので、今から振り返れば、随分な無理難題を申し入れていたのかもしれませんが、神野藤さんはそれらの言い分を全て受け止めた上で、適切なアドバイスを繰り返してくださいました。こうして、旅は何の問題もなく実現されるはずだったのですが・・・
天の計らいは思いも寄らぬ
試練を突き付けてきました。台風が東京を直撃したのです。出発前日には、フライトの欠航が決まってしまい、関空からの代替便に振り替えていただくことにしたにも拘らず、新幹線までが運休してしまったため大阪にも行けず、代替便に搭乗する道さえも絶たれてしまったのです。
それなのに、何故、今回の旅が実現したのか?数々の不思議な要因が積み重なって、旅は成立したのですが、紙面の関係もあって、とてもここでは説明し切れませんので、その経緯については省きますが、今回の旅の不可思議さは、出鼻をくじかれたアクシデントに留まらず、それ以降も、旅の間中、さらなる困難が付きまとっていたということです。まさに試練の繰り返しでした。
その試練がどういうものだったかについて、少し触れてみます。
①パーパスジャパンで予め用意していただいた列車のチケット(乗車券+特急指定券)を、一度もそのままでは使うことができず、往復共に違った時間帯の列車に乗らなければならない羽目に陥ったにも拘らず、その局面を何とか無事に切り抜けられたこと。
②ナポリで、車に乗った怪しい2人連れの男に声を掛けられ、「町の保安のために、外国人が薬物などを持ち込んでいないかを巡回して偵察している・・・」というような口上で、私たちのパスポートやお財布を点検されたことを(怪しいと分かっているのに)どうすることもできなかったこと。一度は解放されたにも拘らず、しぶとく目を付けられ、次には、いよいよ車から下りてきて「へ~い」などと声を掛けてきたことで恐ろしさは頂点に達したにも拘らず、運良く、その時、その場に信号機があって、信号が青にかわったため、横断歩道を一目散に走りぬけ、反対車線に逃げ切ったため、事なきを得たこと。
③ナポリ中央駅はスリが横行している・・・という情報は後で知ったことですが、工夫を凝らした装備のおかげで、物を盗られたり失くしたりすることはなかったものの、ナポリ中央駅でピザを頬張っていた折に、小銭をちらつかせた怪しげな男に「金が足りないから、金をくれ!」とにじり寄られるような場面に出くわしてしまった・・・。なのに、それでも、ひたすら無言、ひたすら無言の態度で難を逃れられたこと。
その他にも、イタリア語を操れないため、列車への乗り継ぎやバスに乗る時、ドライバーや船頭さんへのチップをどれ位にしたらいいかの判断などに、日本にいたら決して使うことのない気配りや神経をフル稼働させなければならなくなったことで、却って、通常では味わえない旅の醍醐味を存分に味わい尽くせたというおまけまでついてきました。
落ち着いた懐の深いギリシャの島の佇まいも大好きですが
一瞬たりとも予断を許さない、スリルと冒険に満ちた南イタリアの陽気な空気感やワクワクドキドキ感もまた格別のものでした。心臓が縮みあがるような切羽詰った思いに直面した分、現地の多くの人々に、優しく親切にされた鮮烈な思い出は、より一層、深く心に染み入るものとなったのです。
まるで、ロールプレイングゲームで数々の悪キャラをやっつけながら、やっとゴールに達したような痛快な旅の思い出と記憶は、帰国後の私の日常をとてもビビッドなものに変えてくれています。旅も人生。人生も旅。その時は苦しくて辛いと思える旅の体験も、それが自分の血肉となるほどに昇華された暁には、楽しさや喜びも倍増する・・・ということを身を持って知ったからです。
「あそこが良かった。」「ここが良かった。」そうした感想を持つというよりは、この旅のすべてに「チャオ!」と感謝したくなるような奇跡の体験旅行が現実のものとなったのです。
そんな奇跡が成立したのも、神野藤さんを始め、この旅を応援してくださった川崎さん、米澤さんのご尽力があったこそと感謝しています。本当に有難うございました。次は、もう一度、ギリシャの島を(違った切り口で)訪ねてみたいと思っています。その時もどうぞよろしく!
追伸:南イタリアへの旅は「上級者コース」でした。腕に自信のある方にはお奨めのコースです!