アイルランドが誇る自然遺産観光と
ギネスビール堪能旅行 8日間

期間:2011年8月17日~2011年8月24日
飯野様 ご夫妻

GON-000494

◆ア ル ラ ン ド 旅 行 記 (ご主人様 編)


都内にいくつか“THE DUBLINERS IRISH PUB”というお店があります。その一つ新宿店で飲んだ一杯の「GUINESS」が私の認識を変えました。

カウンターで注文し、外人さんがパイントグラスに黒い液体を注ぐ様子をみていました。グラスを傾けて7割くらいまで注いだものの中は泡だらけ状態で、さらに泡が膨れあがります。するとカウンターに仕付けられている水切り盤の上にガラスを置きました。

待つことしばし。泡が落ち着いたところで、グラスの縁ギリギリまで静かに黒い液体をつぎ足します。そして私の前に提供されたパイントグラスの上部には、あぶくひとつ無いクリーミーな泡。グラスの底には透明感のあるチョコレート色の液体。グラス上部と底との間はちょうどクリーミーな泡とチョコレート色の液体のグラデーション。それによくみると泡の上には三つ葉の文様が。(後にその三つ葉の文様を総称して「シャムロック」と呼ぶことを知りました。)。

グラスを手にし、空いている立ち席に寄り、グラデーションが落ち着いて泡と液体との境がはっきりするまでグラスの中の細かな泡の行方を追っていました。

何となくでしたが、頃合いかな?と思い、一口、!!!!!!!!
舌に優しく乗っかり、ほのかな甘みが口の中に拡がり、ビールにありがちな苦みは飲み込んだ後に喉の奥のほうからほのかなローストの香りとともに立ち上ってくる。

そうです。今まで経験したことのない味わいでした。
それまでギネスビールといえば、ボトリングされているか缶のものしか飲んでいませんでしたし、普通に冷蔵庫で冷やして飲む黒ビールのブランドの一つという認識しかなかったのです。

感嘆してカウンターをみると、バックバーにギネスの認定証があります。ギネスの本場にいつか行ってパイントグラスを傾けたい、と思った瞬間でした。

アイルランドの文化・歴史・自然に興味のある私の妻は、以前からアイルランドにいってみたいといっておりました。また、私もギネスビールだけではなく、ジェイムソンやブッシュミルズ、U2、それに世界的大ヒットとなったリバーダンスから触発されチーフテンズを始めとするアイリッシュミュージックetc.に興味を持ち、アイルランドへの想いが強くなっていました。そして、今夏、妻が長期の休みを取れるのに合わせて私も休暇を取得し、アイルランドを訪れることにしたのです。

成田からほぼ半日の時間をかけ夕刻ダブリンに到着。

投宿し、すぐに夕食をかねてダブリン市内へと足を運びました。

向かった先は、最初の夜なので、ガイドブックのお薦めどおりにテンプル街。多くの人々で溢れる街路を歩きながら、妻と「この店」とオーラを感じることのできるところを探し回りました。

そこで入ったお店が「The Farrington's Bar」。
早速バーテンダーに「GUINESS!1PintONE & HALFPINT ONE!」と注文しました。どうやら伝わったらしく、それぞれのグラスに注がれる液体。

「来たぜ~!飲むよぉ~!!」 帰国までの連日ギネスの始まりでした。

アイルランド上陸初のギネスビール
アイルランド上陸初のギネスビール

私と妻の前にそれぞれのグラスが置かれます。右手でグラスをわしづかみにし、口まで運びます。

ところで話は変わりますが、パイントグラスは、取っ手つきの、いわゆる“ジョッキ”と違い、掌全体でグラスの重さと冷たさ、つまり中の液体の重さと冷たさを感じることができることが良いところだと、つねづね思っていました。ダブリンでの初めてのギネス。口で味わう前に掌で冷たさと重さを楽しんでいました。

良いですねぇ。冷たすぎず、かと言って温(ぬる)いわけでもない感触。

グラスに唇をつけます。んぐ、んぐ、んぐ、んぐ、“ふーっ”

ギネスを飲んだ後は“ぷはーっ”じゃないんです。ドイツビールのシュパーテンとかでしたら、“ぷはーっ”が正しくて“ふーっ”だと人生に疲れたおじさんになりかねませんが。

優しい口あたりと、喉の奥の方で僅かに感じる炭酸の刺激と「甘苦」感、柔らかな液体が食道をとおり胃袋に収まるまでの過程が確かに感じられます。身体全体に染み渡るような、とはこういうことを言うんだな、と実感します。

お腹も空いてきましたので、初日は定番づくしということで、FISH & CHIPS にしました。正直に言うとアイルランドの食べ物に全く期待していませんでしたが、良い意味で裏切られたことを告白せざるを得ません。異国での最初の食事という条件を差し引いたとしてもです。

また相性がとっても良いんですね。ギネスと白身魚のフライ(というよりはフリッターのような食感でしたが)とフライドポテト。仕上げにジェイムソンゴールドをストレートでワンショット。宿のベッドに戻ることとしました。

アイルランド二日目。

この日はアイルランド西部のゴールウェイに向かいます。
朝食を(ギネス抜きで)済まし、朝のバスに乗り込みます。車窓を流れる景色を楽しむうちに、およそ二時間半でゴールウェイのコーチ・ステイションに到着。

ゴールウェイでの宿となる「Harbour Hotel Galway」まで地図を頼りに向かいますが、殆どポンチ絵のような地図に自分たちがどこに居るのかも定かではありません。すると、一人の女性が近づいてきて「何か手助けすることがありますか?」と声をかけてくれました。

女性に地図を示し、ハーバーホテルというところに行きたいのですが、と伝えたところ、地図を眺めながら周りを見渡し「この道をまっすぐ進んで突き当たったところを右に曲がってそのままいけばホテルに着くわよ。途中に分かれる道があるから迷わない処まで送ってあげるわ。ついて来なさい。」(多分こんなことを言ってくれていたと思うのですが)との有り難い言葉。

アイルランドの人たちは親切な人が多いと聞いていましたが、その一端に触れたひとときでした。見ず知らずの旅人に声を掛けて頂いたご婦人、ありがとうございました。

そんなこんなで宿には13時前に到着。
チェックイン時間前なので、フロントに荷物を預けようとしたところ、部屋に入れますよ、の一言。荷物を置き、昼食を摂りに出かけました。

ゴールウェイは大西洋・ゴールウェイ湾に面する、12世紀からの港町でゴールウェイ州の州都ですが、市街部はこじんまりとしています。ドックヤードのそばにあるホテルから中心街までそぞろ歩きでおよそ10分。ちょっと遅めのお昼時。軒先のテーブルの上にはギネスのグラスがちらほら眼につきます。意外とハイネケンのボトルなんかも眼についたりします。

食事ができそうなお店が建ち並ぶ街路を歩き回り、入ったお店は「SONNY'S」と言う名のパブ・レストラン。
お昼ごはんですが、躊躇無く「GUINESS!1Pint ONE」。このお店では注文を聞き返されてしまいましたが、グラスを握り店内壁際の席へ。このお店のグラスは、若干ひんやりと感じます。ダブリンよりも町自体が涼しいからなのでしょうか?口に含んでも、前夜のギネスに比べて冷たいかな?という感があります。ただ、逆にそれが乾いた喉にほどよぉく染み渡ります。「これもギネスだな。」
ギネスと一緒に頂いた温野菜のホットサンドも、大変美味しいものでした。

ごちそう様と店を出ようとしたところ、いきなりの雨。ついさっきまでお日様と青空が頭上にあったのに。話しには聞いていましたが、これがアイルランド標準のお天気。しばらくするとお日様が戻ってきました。まさしく“驟雨(しゅうう)”。

そんなこんなでショップストリートを一巡りし、一端宿に戻り、仕切り直して夕食に。どこのお店も魅力的で、どこに入ろうかと迷ったのですが、今夕はギネスではなくても良いかな、ということでゴールウェイでも人気があるというワインとチーズのお店に。

メルロー種とシラー種の赤ワインがあったので、チーズ盛り合わせと魚の燻製の盛り合わせを頼んだら、オーナーの方が、「はぁ?赤ワインと魚?チーズと魚の薫製?(これだから日本人は)」的な表情をされてました。

メルロー種のような、酸味が低く若干スパイシーでタンニンも強いがミディアムボディの赤ですとか、シラー種のように濃厚でスパイシーな赤などでしたら、却って白よりもスモークサーモンや鯖の薫製とかに合うのではないかしら?と私は常々思っているのですが、長い歴史の中で積み重ねられてきた味覚と味の組み合わせは一朝一夕に変わるものではないでしょうし、何より私には思いをしっかり伝える英語力が無い!!という大弱点が。ま、“ワインを知らない日本人でも良いやぁ”、と開き直り食事をしました。

とはいえ、チーズ、薫製(冷燻、温燻)とも大変美味しく、グラスワインがこれまた東京のこじゃれた店なら3倍は値段をつけるだろうなレベルのものでした。お店の名前は「SHERIDANS」です。(窓際から望める夕陽に照らされる聖ニコラス教会の景色も、また格別の味わいでした。)

Sheridanから見た聖ニコラス教会
Sheridanから見た聖ニコラス教会

3日目は今旅のメインイヴェント、イニシュモア島ツアーです。

イニシュモア島について書き始めると、とめどなくなるので触れないこととして、昼食のギネスの煮込みシチュウがとっても美味しかったことと、併せて飲んだ缶ギネスが思いの外美味しかったことのみを挙げておきます。

夜はゴールウェイに戻り食事を摂ることとなります。とりあえず、一日ツアーで疲れた身体と乾いたノドにということで、地元の人々が多く集まっている感のある「Tigh Coli(チ・コリ) Galway」というパブに寄ります。店内ではトラディショナルアイリッシュミュージックのライヴが行われていて、食べ物は乾き物のみ、と、まさしくギネスを楽しむためのお店。

で、ここで頂いたギネス、結論から先に言いますと、今回の旅で味わった中で最高のものでした。
グラスを握ったときに伝わる程よい冷え具合、口の中に感じる炭酸ガスのわずかな擦過感、口中に残るほのかな苦みと甘さ。サーブしている様子を見ても特に特別なことをしているようには見えません。アイルランドの妖精に騙されでもしているんでしょうか?
ギネス以外にも、ツアーガイドの方から薦められたビールの Galway Hooker も試しました。ピルスナーと見まがうばかりの色・味わいのペールエールでした。いやいや、アイルランド、ただ者ではないです。

チ・コリを出て食事をするところを探します。実は昨夜入ろうかどうか迷った「TEAC NA CEIBE」という名のお店。ゴールウェイは海の幸、とりわけ牡蠣が有名とのこと。これを食さずに帰るわけにはいかないでしょう。飲み物は当たり前のようにギネス。
日本のビール(大手メーカーの有名ブランド)ですと、牡蠣の磯臭さが強調されるように感じるのですが、ギネスは逆に牡蠣の甘さを強調するように感じます。これはギネスが美味しいからなのか牡蠣が美味しいからなのか・・・・美味しいからどっちでも良いんですどね。

ということでその夜もギネスを堪能しました。

次の日はレンタカーを借りて

クリフトンまでのドライヴ&クリフトンでのレンタサイクル。
飲酒運転は御法度ですから、当然昼食でのギネスはおろかアルコール類はきっぱりあきらめ晩ご飯に全てを託します。(クリフトン、良い街です。コネマラ地方には再訪したいです。)

ゴールウェイに戻り、昨夕すばらしいギネスとフーカーを味わさせてくれた「チ・コリ」に迷うことなく向かい、まずは一杯。昨日と寸分変わらぬ感動を覚えさせてもらいました。

ここでバッタリとイニシュモア島ツアーで一緒だった日本人女性と出会い、3人で食事を楽しむことにしました。彼女曰く「ムール貝が食べたい」というので、あれこれ迷ってもと思いガイドブックに載っていた魚介類専門の「Mc Donagh's」へ。私たちはこの夜が最後のゴールウェイでしたし、また彼女もアイルランド最後の夜ということでしたので心残りの無いように魚介類をオーダー。私の飲み物は当然ギネス。
ところでギネス、魚介にあいます。ちょっとしたローストの香りが魚の生臭さを覆い隠すからでしょうか?日本に戻ったら意識して試してみようかと思いました。

いつの間にか旅も終わりに近づいて、ゴールウェイからダブリンにディーゼル機関車(北海道宗谷本線で走っているディーゼルスーパー特急宗谷並みに格好良かったです)で戻ります。連日の贅沢が消化器官には少々重荷だったようで、この日の昼くらいから若干胃が重く感じ、余り固形物を食べようという気になりません。

ダブリンに戻った夜は、知人と会う約束がありました。食事をしながら、といっても私はギネスを2杯だけでしたが、相手の方から「液体は大丈夫なの?」とあきれられてしまう始末です。が、さすがにエールは胃に優しく糖分と水分補給もできるので、固形物を入れない分、消化器官が回復していくのが分かる気がします。(呑兵衛の言い訳でしょうか?)

アイルランドも最終日。

もう一つのイヴェントであるギネスの工場見学に赴きます。

ここで一言。いくら何で も入場料14.40ユーロは高すぎます。後日インターネットでチケットを購入すると10%オフになることを知りましたが、それにしても、ニッカの余市工場 は(ウィスキーですが)見学無料ですよ。サントリーの武蔵野工場も、予約が必要とはいえ見学無料ですよ。
しかも“自分でギネスを注いでみよう!コーナー”でサーバー体験をするとスカイラウンジでは飲めませんよォ、ということでしたし、これはちょーっと如何なものかと。

ま、中に入ってみればそれなりに楽しめますし、いろんな理由から高層建築物がほとんど存在しないダブリンにあって、ギネスタワーから一望する景観は、一見の価値はありますが。

ギネス・ストア前にて
ギネス・ストア前にて

で、お待ちかね!ギネス工場で飲む作りたてのギネス!!

ただ、ここでちょっと気になることが。水切り盤の上には7分位まで注ぎ終わり、泡が落ち着いているパイントグラスがずらり。入場券と引き替えにスタッフがにこやかぁにサーブしてくれるのですが、その泡が落ち着くまでグラスはどのくらいの時間そこに??

そこはそれ、できたてのギネスなんて、めったやたらに口にできるものじゃないでしょ?!と気を取り直して、ぐびり。うん、美味しいね。美味しいよ。けれどゴールウェイのチ・コリで飲んだギネスの方が・・・・とは妻との一致した意見。

ギネスは自然由来の材料から自然の力を利用して最後にはサーバーという人手を介するものなので、微妙な、本当に微妙な差異が、最後口に含んだときのギネスの風味に影響があるのかしらん?と思った次第でした。昼食はギネスストア内で摂ることにし、何となく悔しい(?)私はボトルのギネスを注文。これが、思いの外美味しかったので、思わず苦笑。

アイルランドでの最後の夜、トリニティカレッジの南側にも美味しいお店がたくさんあるとのことで、そぞろ歩きを楽しみつつ、店を探します。何軒か迷ったあげく、店自体の雰囲気や客層が落ち着いている感がするところがあったので、そこで食事を摂ることに。
消化器官が70%程度しか回復していない私は、ギネスと野菜スープをオーダー。もっともこちらの野菜スープは量も半端じゃないですし、ブレッド&バターがしっかりつくので、殆ど軽食レベル。充分に一食に値します。長かったような短かったような駆け足の旅を思い浮かべながら、といえればスマートですが、やっぱりギネスが気になります。

というのも、このお店のギネスは今までのに比べ、少々温度高め?と感じがあり、それがギネスの甘さをより引き出すらしく、疲れ気味の身体に優しい酔い心地がじわーっと拡がっていきます。何種類かの野菜がしっかりと裏ごしされているスープと相まって、殆ど滋養食。実際に薬効(?)があったのか、翌日には体調もほぼ回復していました。

ちなみにこのお店、全く当てずっぽうに入ったのですが、後で調べたら、デューク・レーンの「Davy Byrne's pub」といい、ジョイスやマイケル・コリンズ縁(ゆかり)のお店だったとのこと。

ギネスを楽しみ、ギネス以外の

エールや食べ物、それから、この文章には殆ど書きませんでしたが、アイルランドの風景、空気、人々、音楽、歴史あれやこれやに一週間触れ、いや一週間ではとても足りないなぁ、と。是非再訪したい国・土地です。

今回、短い期間で私達の要望を最大限取り込みながら、大変リーズナブルな旅程を提案頂いたパーパスジャパンさんには大変感謝しております。

次ぎの機会、アイルランドに再訪するとき、いや、ドイツビールの旅も、ベルギービールの旅も、フランスワインの旅も、音楽祭巡りも・・・・また何かありましたらよろしくお願いしたいと思います。

◆ア ル ラ ン ド 旅 行 記 (奥様 編)


はじめに。

ケルト文化に興味があり、直接触れてみたいということから、アイルランド旅行を計画しました。

大手旅行会社の組むツアーは、ダブリン中心で、ケルト色の強い西の方中心のものが見あたらず、どうしようかと思っているときに、PURPOSE JAPANさんを見つけてお願いしました。

成田 ~ ダブリン

KLM(オランダ航空)にて、アムステルダムへ。Aer Lingus(エア・リンガス航空)へ乗り継ぎ、ダブリンに夕方到着。早速、テンプル・ストリートへ繰り出し、ギネスとフィッシュ&チップスで乾杯。一人旅のドイツ人弁護士さんと意気投合して、片言の英語ながら何とか会話が成立。

お酒好きの夫が目を輝かせてバーカウンターの背面に並ぶボトル類をデジカメに収めていると、「Go Ahead」とバーテンさんがバーカウンターの中に招き入れてくれ、ギネスのグラス片手に記念写真を撮らせてくれました。

ダブリン ~ ゴールウエイ

“旅は、移動も楽しもう”というのが、私たちのモットー。ダブリン~ゴールウエイの移動は、往きはバス、帰りは電車で組んでいただきました。

バスは大型の長距離バス。日本だったら、座席数しかバスチケットを売らないのが普通なのに、ここは、その場で運転手にバス代を払っても乗れるらしい。

空港始発のようだったバスはすでに沢山乗客が乗っていて、私たちの一組前の乗客が乗ろうとしたところで、「リザーブしていない人は次のバスを待ってくれ」と運転手。勝手に荷物入れにトランクやらバックパックやらを投げ込んでいた人たちがこれもまた勝手に取り出して、次のバスを待とうと、列からはずれていきました。

ゴールウエイ

西の都市、ゴールウエイに三泊。アイルランドではダブリンの筆頭に、四大都市の1つとのことですが、街の中心に商店やパブなどがまとまり、日本の感覚では、小さなきれいな田舎の中心の町という感じです。人々は親切で、観光客も多く、田舎者の私たちにはとても居心地の良い街でした。

私たちの旅のモットーの1つ“旅に出たら、その土地の食べ物、飲み物を食すべし”をゴールウエイでも実践。

ビールは、Ewe Tours(ユー・ツアーズ)の嶋口さんに教えていただいた地ビール、hooker(フーカー)を早速パブで注文。ペールエールタイプとのことですが、ピルスナータイプのような色で、酵母の香りとホップの苦みがち丁度良い具合に調和がとれた美味しいビールでした。これまた嶋口さんおすすめのSwith Wich(スミス・ウイック)は、透明なワインレッドの色のエールタイプのビールで、甘口ですが味わい深く、ギネスはちょっと苦手という女性にお勧め。

“アイルランドでは、お酒を楽しもう”と旅の前に思っていましたが、正直、食べ物に関しては、日本で食べる油っこく身はパサパサのフィッシュ&チップスのイメージしかなく、全く期待していませんでした。ところが、本場で食べるフィッシュ&チップスの美味しいこと。衣は軽く油濃さは感じられずサクッ、魚の身はほどよく水分が残り、旨味があってジューシー。ダブリンでは中身は鱈でしたが、ゴールウエイでは大鮃(おひょう)のようでした。

その他、産地として有名な牡蠣をはじめ、ムール貝、鮭、各種魚の薫製、サーロインステーキ、ギネスシチュー、各種スープなど。チーズやパン、ケーキも美味しく、毎回違うものを注文して、楽しみました。

ゴールウエイの地ビール hooker
ゴールウエイの地ビール hooker

イニュシュモア島 (Ines Mor)

アラン諸島は1970年代まで昔ながらの暮らしをしていたと聞いており、私の中では、映画「アラン」や「フィオナの海」のイメージが強く、是非行ってみたいと思っていました。そこで、アラン諸島の中の一番大きな島、イニュシュモア島への1日ツアーを旅程に組んでいただきました。

それまでは良いお天気だったのに、朝から雨。海が荒れると船が出ないと聞いていたので、いつ「中止します。」と連絡が来るかとひやひやしましたが、アイルランド独特の石垣が建つ風景の中を港までバスで出発。街道沿いには、崩れた石造りの家のすぐ隣に新しい家が建っているところがあり、聞くと、壊れた家はそのままにして、隣に新築するとのこと。日本では朽ちた家は、もう人が住んでいない土地に建っているのとは随分違います。

ゴールウエイからイニュシュモア島への船が出る港へ向かうこの辺りは“ゲールタクト”で、基本的にゲール語(アイルランド語)で暮らす地域とのことで、道路標識もアイルランド語しか記されていません。

船は横殴りの風雨の中、イニュシュモア島に到着。雨で濡れることを想定して、夫はジーパン、私はポリウレタンの入った9分丈のパンツを履き、上は風雨を防ぐフードのついたアウトドア用のウインドブレーカーを着ていて大正解。私たちは、横殴りの吹雪が吹き荒れる地方で育ちましたが、これが冬だったらそういった凍死しそうな天気だろうと思われる天候でした。

島一周に連れ出してくれた運転手が「昨日はすごく良い天気だったのに、生憎だったねえ。」とアイルランド語訛りの英語で言ってくれましたが、私たちがイメージするアラン島は正にこれ。アラン島らしいアラン島を観ることができました。

萱葺きで窓の少ない昔の住居、崩れた家、教会や石垣などを窓越しに観ながら、七つの教会跡(No Seacht dTempall 又は Seven Chueches)へ。崩れた石造りの建物や祭壇、ケルト十字、お墓などが残り、その場所だけタイムスリップして、修道士の歌う聖歌の響きが聞こえそうな雰囲気のところです。

その裏の墓地には、昔の人のお墓に混じり、生花が沢山供えられ、額縁に入った写真まで置いてあるお墓がありました。つい最近亡くなった方のお墓とのこと。ここは、今も墓地として使用されているそうで、朽ちた教会と現代のお墓というちょっと不思議な空間でした。

7つの教会跡
7つの教会跡

雨は一旦、小降りになり、車は石灰岩の岩盤が続く海沿いへ。この岩を砕いて海藻を敷き詰め、馬鈴薯を植えられる土地に改良したと聞いていましたが、ツルハシなどで砕いたのだろうかと状況を想像するとこの堅固な岩盤を砕くのは、どんなにか難しい作業だっただろうと思われました。
海近くに船が一艘つないであり、よく見ると昔ながらのコールタールを表面に塗った船のようでした。この船でこの荒れる海に漕ぎだして行ったのかと思うと、それぞれの家ごとに違った模様で編んだアランセーターを着て行ったというのも頷けるものがありました。

作り手がひとりになってしまったという妖精の家を観ながら嶋口さんお勧めのカフェへ。ここで昼食。
ケーキ類を含め、どれも美味しそうで迷いましたが、まずは定番でと、ポテトグラタンとギネスで煮込んだシチューを注文。シチューの上にはそれと同量くらいのマッシュポテトが山盛りに。日本の感覚だと、ポテトは添え物で、ちょっと脇についているだけですが、こちらは、とにかくポテトが沢山でしかも美味しい。それだけでもお腹いっぱいになります。肝心のシチューもよく煮込まれていて美味でした。

次の見所は、古代遺跡ドン・エンガス(Dun Aonghasa)。
下は石畳、脇は石垣の中を砦を目指し、再び強くなってきた横殴りの風雨の中を進みます。この強風でも崩れないゆにちゃんと隙間を空けて積んである石垣は、様々な大きさのものが組み合わされているのに、高さと幅が統一されています。さらに、牧畜を通すときには、一部の石をはずすそうですが、その場所も決まっていて、そこの石をはずしても外は崩れないようになっているそうです。

ドン・エンガスの片側は、断崖絶壁。スコットランドやアイルランドの昔の城主達は、断崖絶壁の上にお城を建てているというシチュエーションのお話に良く出会いますが、正にこんな感じなのだろうと思わされました。断崖の下に打ち寄せる波は真っ白く泡立ち、猛烈な勢いで島の脇腹に打ち付けてきます。あまり断崖の縁に近づきすぎると、突風に巻き上げられそうな風雨。これこそ思い描いたアラン島。
夫はこの断崖絶壁に向かって、ソプラニーノリコーダーを取り出し、風に吹き口を巻き上げられながら、リバーダンスの一曲を吹いてバックグラウンドミュージックに。

イニュシュモア島の石畳
イニュシュモア島の石畳

枯れた木々のように立てられた沢山の石などに目を向けながら下り始めると、急に風雨がやみ、日が差してきました。すると今まで荒涼としていた風景が一気に田舎ののどかな風景に早変わり。日の光のある時とないときの景色の差にびっくり。訪れたときの天候で印象が随分変わるようです。私たちは、両方の風景を楽しむことができ、幸運でした。

帰り道は海岸沿いの道を走り、途中、アザラシが観られる場所へ。浅瀬にのんびりと横たわるアザラシを、妖精の家の脇から観ることができました。

コテージの隣に建つ妖精の家
コテージの横に建つ妖精の家

クリフトゥン(Clifden)

翌日は、レンタカーを借りて、クリフトゥンへ。前日の計画では、コネマラ国立公園へ行く途中に、クリフトゥンへ寄り、国立公園を観て、別ルートを走って帰ってくる予定だったのですが、9:30~で予約していたレンタカーをゴールウエイから出発させられたのが、なんと11:30。日本のように、予約時間に合わせて車を手配して、スタンバイさせておくという効率的な発想はないらしい。
これも“郷にいれば郷に従え”の旅の醍醐味と言えば醍醐味ですが・・・。レンタカーは時間貸しがなく、2日まで同じ値段のようなので、1日を有効に使いたい場合は、前の日から借りていた方が良いようでした。

クリフトゥンは、田舎の避暑地という感じの小さなこじんまりとした街でした。ここで、レンタサイクルを借り、スカイロードをサイクリング。妖精が出てきそうな岩、岩と岩の間の草地に群生する黄色と赤紫のヒース、ところどころに残る遺跡や朽ちた家、ロバや羊、牛や馬などの牧畜達、牧草地を走る石垣・・・これぞ私の思い描くケルトの地。
早く一周しないと、レンタカーを返す時間に間に合わないというのに、きれいと言っては止め、羊がいると言っては止めと、景色を楽しみ、沢山写真を撮ってきました。

ちなみにスカイロードは、3コースあるようで、私たちが行ったのは真ん中のコースだったようです。ガイドブックには半日のコースとありますが、一番長いコースは、お弁当を持って、一日かけて回っても良さそうでした。また、ハイキングをしている人も多く見かけました。

スカイロードから見た廃墟と入り江
スカイロードから見た廃墟と入り江

ゴールウエイ~ダブリン

翌日は午前中、ゴールウエイ市内を散策。丁度日曜日で、人々が礼拝に集まってくる大聖堂を観たり、真っ赤な蔦の絡まるゴールウエイ大学を観たりして昼食代わりのアップルパイをスーパーで購入。昼過ぎの電車に乗り込みました。

窓の外には例によって、石垣と牧場が崩れた家やお城、車内放送はアイルランド語が先、英語が後、駅名表示もアイルランド語が上、英語が下と電車の旅を楽しみながらダブリン着。

次の日は、1日ダブリン市内観光。ダブリンに行ったら、絶対に観ようと決めていた“ケルズの書”とトリニティカレッジの図書館“オールドライブラリー”へ。30分は並ぶと聞いていたので、朝9:30頃到着。すでに長い列ができていました。20分ほどで中に入ることができ、大きなパネルに拡大されたケルズの書と説明書きを観ながら中に進みます。最後にガラスケースに入った本物のケルズの書に感激。保存状態が良く、岩絵の具等の彩色は鮮やかで、人の手とは思えないほどに揃った文字や凝った図柄はいつまで観ていても飽きないものでした。

階段を上がると、オールドライブラリーへ。高い天井まで2階立てに設置してあるオーク材かと思われる重厚な本棚に、アルファベット順に納められた革表紙と思われる本の数々、長い年月の積み重ねが目の前にありました。

お昼は、ギネスストアへ。オールドライブラリーとはうって変わって、現代的な建物に、ギネス作りの行程や道具、ホップや水などが各階テーマ別に展示してありました。午後は、ジェイムソン蒸留所に寄り、アイリッシュウィスキーを購入。

一旦ホテルに戻ってから、今度はグラフトンストリートへ。脇道に入ったところにあるパブで、アイルランド最後の夕食を摂りました。私たちの旅のモットー“ガイドブックは参考にはするけど当てにしない”により、その付近にいくつかあるレストランやパブから一番落ち着けそうな店を選びましたが、後で調べるとジェイムズ・ジョイスゆかりのパブだったようです。

おわりに

“ケルト文化に触れたい”という旅の当初の目的が達成され、満足です。心残りと言えば、イーリアンパイプや木製のフルートを買って来たいという願いが叶わなかったこと。モハーの断崖はじめ、一般の観光客が行くところに行かなかったこともあり、是非、また、訪れてみたい国です。

Purpose Japanさんには、限られた日にちの中、コーディネートしていただきありがとうございました。ダブリン、ゴールウエイそれぞれの滞在先で、日本人ツアーコーディネーターの方に対応していただいたのも、心強かったです。機会がありましたら、またよろしくお願いします。

ツアープランナーからのコメント

旅行記ありがとうございます。
アイルランドの自然の素晴らしさ、本場ギネスビールの味、アイリッシュの人の温かさなどがよく分かりました。初めてのアイルランド旅行、お楽しみ頂けたようで良かったです。

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