キューバに行こうと決めた理由はいくつかあった。
これまでいろんな都市を訪れては来たが、いわゆる定番の都市ばかり選んできた。わたしも主人も俗人なので、自然を楽しむより、人や街の風情に触れることを旅行の醍醐味としている。キューバでは、これまで体験したことのない文化、人々の気質に触れることが楽しみだった。昨年米国との国交が回復して以来、どんどん観光客の数が増えており、おそらくは数年たったら本来のキューバの風情が薄れていってしまうのでは、という心配も引き金になった。
予想にたがわず、キューバというかキューバの人々は独特だった。今回の旅の最初の滞在先となったメキシコ・シティで出会ったベテランの日本人ガイドさんから、キューバでの観光客の舞い立ち振る舞いについて貴重なアドバイスをもらっていた。これが大変役立ったといえる。キューバ人にサービスは求めない。郷に入っては業に従えだ。
キューバ人は契約にあること以外はしない、言い換えれば、おもてなしの心得が薄い。人の持場を犯すのは不徳とする、ということか。これからは観光で外貨を稼ぎたいと思っているであろうに、それにしては基本的な接客の心得がないことがわれわれには理解できない。ただ、その理解できないところが結構興味深かった。能力はありそうで、きちんと働くが、愛想をふりまかない、気を利かさない。
また、途中で気づいたことには、挨拶しても、自分の名を語るという習慣がない。西欧では自分の名を告げることで、親しみを醸し出し、また自分のサービスに責任をもつ意の表れとなるのだが、彼らは違う。こちらが尋ねれば教えてくれたのかも知れないが、特に聞く気もなかった。こちらに名前を尋ねてくることも皆無。関心ない、というところか。スペイン語圏なので、気質もラテン系でオープンなのかと思いきや、ラテン気質より慎重な印象をもった。
さすがに5つ星ホテルの従業員は笑顔で対応し身のこなしも接客慣れしているが、日本や西欧の5つ星と比べたらだいぶ劣る。警察と医者の数が多いと聞いたが、外国人を乗せるタクシー運転手は秘密警察かも、という話は 嘘ではないかもしれない。観光客を守ると同時に行動を監視しているようだ。わたしたちがハバナに滞在中に、偶然にも安部総理がハバナ入りしていたが、タクシー運転手は総理がどこに泊まっているかは知っていても教えられない、なんて言っていた。
もっともサービスに差があったのは空港だった。まずはハバナ空港に到着したとき。わたしたちは4名の仲間うち(夫婦2組)ツアーで、ビジネスクラス利用であったのに、預けた荷物が出る順がばらばらで、なかなか出そろわなかった。どうやらビジネスクラスを優先するという意識がないようだ。また、空港のどの売店にいってもボトルウォーターが品切れだったことには驚いた。日中は30度を越える暑さなのに、水が売店にないというのはびっくり。
ハバナ空港からすぐに送迎車に乗り、バラデロに向かったが、途中の道端の休憩どころを運転手が当たってくれ、3軒めくらいでようやく水にありつけた。バラデロで3泊し、ハバナに戻って2泊、最終日はハバナから再びメキシコ・シティ経由で帰路についた。ハバナ空港までは送迎を頼んでいたが、空港についてからは、自分たちでチェックイン。ドライバーは送迎しかしてくれない。徹底している。ここでもビジネスクラスの優先カウンターはなく、空港スタッフの数が著しく少ないため、最初はどこで並ぶかもわからない始末。乗客同士で協力してマナー良く並んでいたが、列が太く長くなると横入りするような客もいて、行儀よい日本人としてはいらいらした。
ハバナ空港には使えるラウンジがなかった。エアーフランスだったと思うが、専用のラウンジがあり、エアロメヒコの利用者でも使えるのかと、カウンターで聞いたが、NO といわれた。さすがに座席はビジネスクラスであったが、機材は古く、CA は愛想がなかった。他にも日本人客がいたので、助けてもらい、メキシコ・シティでの乗り換えもなんとかスムースだった。同じエアロメヒコ利用での乗継ぎだったので、預けたスーツケースはスルーで成田までいくと思っていたが、そうは問屋がおろさず。メキシコ・シティでピックアップし、預けなおし、再度チェックイン。充分に乗り継ぎ時間があったからよいものの、急いでいたら危なかった。今回はキューバ内での移動を車にして正解だった。国内線は聞くところによると時間が相当正確でないらしい。