僕たちはポルトガルへと旅立った。

2017年の2/1から10日間、僕たちはポルトガルへと旅立った。
明確に行きたい場所があるわけではなかった。ただ誰かが言っていた“良い国だったよ”という言葉と、世界の東の果てで生まれた僕たちには、西の果ての国がどう見えるのか、そんな興味だけで行き先を決めたのだった。

このポルトガルの旅はリスボンから始まって、シントラとロカ岬で雨に打たれ、オビドスの城壁に感動しコインブラでファドを聞き、ポルトまで駆け抜ける、そんな旅だった。

この国は良い意味で、想像に思い描いていた国だった。街にはゴミもなく縦横無尽に壁に落書きがされていることもなかった。その代わり、街に巡らされたトラムの線路と太陽の光を鈍く反射させるアズレージョが象徴的で、そこに住む人々は優しく陽気な、とても美しい国だった。
けれど、それだけがこの国の全てだとは思えなかった。それは過去の栄光ともいうべき時代はとうの昔に過ぎ去って、今ではそんなことを気にする素振りも見せてくれはしない。言葉にできない哀愁が強くただよう国だったからかもしれない。

僕も誰かにこの国のことを聞かれたときは“良い国だったよ”とだけ伝えることにしたい。
そして、西の果ての日が沈む国で、得も言えぬ夕日の美しさに全身を染めて欲しいと切に願う。