読書サークルの25周年を記念して、『長くつ下のピッピ』 『ニルスのふしぎな旅』 『ムーミン』などの物語の生まれた地を訪ねる旅を企てました。
2011年に20周年記念のイギリス旅行でお世話になったブルーエコツアーズさんの紹介で、去年12月からパーパスさんに手配をお願いし、私たちの夢の実現に至りました。
出発2日前の深夜にムーミン美術館のホームページを観ていて、訪問予定日の23日が夏至祭のため特別休館日なのに気づき真っ青に!すぐにパーパスの担当者岩越さんに予定の組み替えを依頼し、電車の手配とガイドさんへの連絡など迅速に対応してもらいました。ギリギリセーフ! 旅行中も私たちのドタバタは続き、焦りと笑いの思い出深い旅行になりました。
1日目(6月16日 Friday)
6月16日 10:30 中部国際空港をフィンエアー機で出発。順調に飛行は続き、眼下に湖と森が広がり始めた頃、ヘルシンキ空港に到着。乗り継ぎ便が1時間20分遅れ、ストックホルム・アーランダ空港に20時頃到着、アーランダ・エクスプレスでストックホルム中央駅へ。
ホテルは駅隣接のNORDIC C、浜松市を出発して約20時間、疲労もピークに来ていた私たちを現地の手配会社の担当者(日本人女性)が迎えて下さりほっとしました。
2日目(6月17日 Saturday)
昨夜中央駅で購入したトラムや地下鉄などの24時間フリーパスを使って、まずはユールゴーデン島のユニバッケン(子ども博物館)へ。リンドグレンの物語やムーミンのお話の世界で子ども達に混じって遊んでからは、ヒョートリエット市場へ。
ストックホルム市立図書館では、吹き抜けの円形ホールを囲む3階まである書棚の光景に圧倒されました。子どもの本コーナーは独立しており、お話の部屋へは靴を脱いで入り、座面の低いソファに深く腰掛け、ゆったりとくつろげる雰囲気です。
近くに住んでいたリンドグレンが散策しながら本の構想を練ったヴァーサ公園で、私たちも彼女になった気分で散策しました。
観光運河クルーズで、午前中に行ったユールゴーデン島を船から眺めました。船を降りて、王宮の前を通り、旧市街地ガムラ スタンを散策。
中央駅地下のcoopで惣菜などを買ってホテルの部屋で夕食。
3日目(6月18日 Sunday)
早朝散歩で、ノーベル賞受賞祝賀晩餐会が行われるストックホルム市庁舎を外から眺めました。
チャーターした専用車でヴィンメルビューヘ。
いたるところでピッピの絵の看板が出迎えてくれました。リンドグレンワールドでは、ピッピのごたごた荘、やかまし村の3軒の家、エーミルの生活する農場、はるかなる国の兄弟の舞台などが広い木立の中に点在していて、それぞれの場所で劇が演じられていました。暑い日でしたが、どこも家族連れで一杯です。リンドグレンがどれだけスウェーデンの人たちに愛されているか実感しました。
その後、リンドグレンの生家のあるNas(ネース)へ。記念館(?)で彼女の生涯の展示を鑑賞してから庭を抜けると、えんじの壁に白い階段がある生家、父親の木工小屋や納屋が現れました。少女リンドグレンの声が聞こえてきた気がしました。
夕食はやはり近くのスーパーで調達。ストックホルムもここもサラダバーが充実しています。自分で好きな野菜やキノコ、ビーンズ、アボガドなどを容器に詰めて計ります。
4日目(6月19日 Monday)
朝食前にヴィンメルビューの街を散策。ホテル近くに図書館を見つけましたが開館前。隣の役所に出勤して来た女性の市議会議員の計らいで中に入れてもらいました。リンドグレンのコーナーが設けてありました。市議は彼女のおばあ様から、何度ものリンドグレンの子どもの頃話を聞いたそうです。なかなかのおてんばさんだったようです。
専用車で『やかまし村の子どもたち』の舞台となった村、SEVEDESTORP の BULLERBYN へ。現在は一般の人が住む住宅になっていますが、赤い屋根の家が3軒並んでいました。納屋や干し草小屋もブランコもありました。そこでは雑草さえ輝いて見え、リサやアンナ、ラッセたち6人の子ども達が走って来そうでした。そう、やかまし村は村全体が子たちの遊び場でしたね。
エーミルの映画が作られたカットフルト農場へ。撮影で使われた家などを見学しました。豚小屋にはかわいい豚ちゃんがいましたよ。
ルンドで大聖堂を見学して、マルメのホテルへ。マルメのホテルはビュッフェ式の夕食付きでした。
5日目(6月20日 Tuesday)
早朝、ストートリィ広場を散策。スウェーデン最古のライオン薬局を窓から覗きながら通路を抜けると市庁舎の裏に。煉瓦造りの聖ペトリ教会がそびえ立っていました。
ストートリィ広場から続くセーデル・ガーダンにはブレーメンの音楽隊の像が、まるで本当に行進しているように配置されていました。9時に専用車で『ニルスのふしぎな旅』の舞台となったスコーネ地方へ。アッカと別れたスミイエ海岸には大きく羽を広げたアッカの像が立っていました。物語の場面を思い出しながら、海岸線まで歩きました。
ドブネズミとクマネズミの戦い場となったグリミングヒューズ城を見学。城というより砦のような堅牢で質素な建物でした。
今は閉じられている尼僧院の広大な庭を散策。庭の花壇には色とりどりのバラや芍薬が咲き乱れ、野いちごが実っていたのでひとつずつ頂戴しました。トンネルを木漏れ日を浴びながら歩き、清々しい気分に。思わず芝生の上に大の字になり、青空を見上げました。モルテンに乗ったニルスが飛んでいるのが見えた気がしました。
スヴァーネホルム城は博物館になっていて、時代を追って婦人のドレスや家具などが展示されていました。3日間お世話になった運転手さんとはマルメのホテルでお別れです。日本の駄菓子や扇子などをお礼にプレゼント、今度は日本でお会いしましょう。
6日目(6月21日 Wednesday)
青空のもと、王宮庭園を抜けてマルメ城へ。『かもさんおとおり』そのままのカルガモ親子の行列や、戯れるカラス(ニシコクマルカラスらしい)のカップルなど鳥の種類も豊富です。
マルメ城の中は博物館になっていて、王宮生活を垣間見ることができました。
次は世界的にも注目されているマルメ市立図書館へ。1901年に建てられた旧館は煉瓦造りで古城のようです。1998年に完成した新館は、中央部分が吹き抜けでガラス張りの近代的な建物です。
旧館には子どもコーナーがあります。靴にカバーをつけて入ると、緑と茶色を基調とした森を感じさせてくれるインテリアです。木の形をした書棚は幹の部分に絵本や児童書が対象年齢を分けてとりやすいように配置されていました。天井には白い雲のオブジェが浮かんでいます。
おはなしの部屋は濃いブルー系の落ち着いた内装で白い大きいクッションが点々と置いてあり、きっちりしすぎていない感じが心地良かったです。電子レンジが置いてあるコーナーもあり、木製の北欧らしい色彩のテーブルと椅子も配置されていました。肩苦しさが全くなく、遊び心満載で、子どもと一緒に一日過ごしたいと思う図書館でした。
新館は閲覧コーナーも広く、本を読んだり勉強したり、パソコンに向かっている人、沢山の人が利用していました。置いてある椅子やソファも北欧的でオシャレです。「Manga」コーナーもありましたよ。
ホテル近くのキャンディ屋へ。色とりどりのキャンディやチョコレート、グミがガラスケースに一杯です。リコリス(甘草)を練りこんだ黒いキャンディを味見しましたが、馴染みのない味で購入はやめました。世界一まずいキャンデイと言われるフィンランドのサルミアッキもリコリス味です。ピンクの歯の形のものや黒い魚型のものなど見ているだけで楽しくなります。全て量り売りです。ここでGeisha(芸者)チョコレートを買い、スウェーデン通貨を使い切りました。リンドグレンの肖像画とピッピの絵の20スウェーデンクローネ紙幣だけを手元に残して‥‥
さあこれからコペンハーゲン空港に行き、ヘルシンキに戻ります。
7日目(6月22日 Thursday)
もともと今日はヌークシオ国立公園でハイキングの予定でしたが、ムーミン美術館へ。
9:04発の電車でタンペレへ。2階の座席なので見晴らしが良く、二人がけの椅子がテーブルを挟んで向かい合っていて快適です。
10:52タンペレ着。
小雨降る中歩いて、中央駅近くのタンペレホールの中にオープンしたばかりのムーミン美術館へ行きました。「あいてて良かった♪」やはり23日から25日までは休館、今日も通常より2時間早い閉館です。
早速館内へ。ムーミンの12冊の本の挿絵の原画が物語ごとに展示されています。物語の場面を表現した立体模型は、トーベ・ヤンソンとパートナーのトゥーリッキ・ピエティラと友人の医師が作り上げたものです。原画はもちろん素晴らしいのですが、細部まで丁寧に作られた立体模型にも感動しました。
音声ガイドはフィンランド語、スウェーデン語、英語、日本語があります。ガイドのスウェーデン語はトーベ・ヤンソン本人の声です。意味は分からないけど、ヤンソンの声が聞けて感慨に浸りました。日本人のガイドさんもいらっしゃって、いろいろお話を伺えました。ライブラリーでは日本語の本も揃っていて、ヤンソンが手がけたコミックや、ヤンソンの評伝などを少し読みました。ミュージアムショップも充実しています。
隣のソルサ公園で、トゥーリッキが創ったムーミントロール像と記念撮影をしました。トーベの父で彫刻家のヴィクトル・ヤンソンの作品も3体ありました。どれもふくよかな少女像です。
駅近くの百貨店ストックマンで夕食とワインを購入。フィンランドには21時以降はアルコール度数が高い酒類は販売できないという法律があり、昨夜のヘルシンキではワインは買えず、ホテルの冷蔵庫にあった熊印のフィンランドビールを飲みました。さすがデパ地下、洗練された品揃えです。ニシンの酢漬け(今までで一番美味)、ザリガニ、サーモンのグリル、血のソーセージ、キノコのマリネ、スイカのサラダ、そしてピスタチオのケーキ。どれも美味しかった!
21時を過ぎてもまだ外は明るいので、湖畔まで散歩をすることに。雨もあがり清々しい空気の中、白夜を満喫しました。22時半ごホテルに戻りました。
8日目(6月23日 Friday)
今日は夏至祭当日。早朝の電車でヘルシンキ中央駅へ。両替店の前でガイドさんと無事落ち合えました。日本の大学院で古典文学を研究し、現在ヘルシンキ大学で教鞭をとり、その傍ら翻訳や通訳やガイドの仕事もされている才女。(村上春樹や川上弘美の作品などを翻訳)
私たちのために用意してくれた昼食と飲み物を入れたザックを背負って、まだ時間があるからと駅周辺を案内してくれました。電車とバスを乗り継いで、ヌークシオ国立公園入り口に。今日はうっすら曇り空、ハイキングにはうってつけです。コースは2.4km、3.7km、7.4kmがあり、それぞれ赤、青、黄色の菱形の板を目印に辿って行きます。もちろん私たちは超初心者赤コース、湖に沿って森の中を歩きました。道端にはスズラン、ミズバショウなどの可憐な花が咲いています。スズランはフィンランドの国の花だそうです。湖面にはスイレンやヒツジグサが咲き、石の影にはコケモモの白い小さい花も。野生のブルーベリーは丈が低く、実はまだ緑で小さい。7月〜8月には熟すようです。公園内のベリーは自由に摘んで良いそうです。植物の種類は尾瀬沼に似ています。気候も類似しているのでしょう。
休憩小屋には焚き火をする場所があり、そこで火を起こして昼食です。フィンランドの郷土料理のカレリアパイ(ライ麦の皮で米やジャガイモの粥を包んだ小判形のパイ)とチーズ、甘いミニトマトとパンとジュース。湖畔で焚き火を囲んでの昼食は最高でした。家族連れも多く、それぞれソーセージを枝に刺して焼いたり、湯を沸かしたりして楽しんでいました。
帰りは専用車でヘルシンキへ。港近くでバスを降り、市場を抜けて、ロシア正教とプロテスタントの教会を見学しました。プロテスタント教会は中を見学できましたが、質素ながら厳かな感じでした。
白樺の木で作ったアクセラリーを売る店に寄り、高級ブランド店が並ぶヘルシンキの銀座通りをブラブラ。夏至祭でお休みの店がほとんどです。ヴィクトル・ヤンソンの彫像のある公園を抜け、ヘルシンキ大学の図書館を眺めて、ヘルシンキ中央駅へ。コインロッカーで荷物を取り出してホテルへ、ロビーでガイドさんと記念撮影。日本の中学生が作った巾着袋に詰めた駄菓子をプレゼント、彼女からはムーミンのマグネットをいただきました。
夜はいよいよ夏至祭。ガイドさんに教えてもらったバスに乗って、夏至祭が観られる島へ。続々と人が押し寄せて来ます。女の子は花冠を頭に乗せています。その場で花を摘んで冠を作ってかぶる人もいます。民芸品の実演販売の屋台が並び、日本の縁日のように賑わっています。メイポールの傍では、民族衣装に身を包んだ人々がフォークダンスのような踊りを踊っていて、私たちも踊りの輪の中へ招き入れてもらいました。
島の突端がメイン会場。ロープが張られた向こうには舞台が設けられ、哀愁のある民族音楽が奏でられています。藁で作ったポールが点在し、一つ一つ順番に火がつけられていきます。目の前の錨型のポールが前夜の雨で湿っているのか、中々火がつきません。テレビの中継も来ていて、点火係のおじさんが焦っていました。海の中にすっくと立つメインのポールに点火されるのは22時、約1時間立って待ちました。さすがに寒く、保温下着にダウンジャケット、腰には使い捨てカイロを当てて、なんとかしのぎました。21時50分くらいに、小舟に乗った花冠の少女たちがメインのポールに点火、演奏はさらに激しくなり、民族衣装の人々が目にも止まらぬ速さのステップで踊り、夏至祭は最高潮に。私たちは22時半のバスでヘルシンキに戻りました。ヘルシンキ中央駅行き最終バスは午前2時だそうです。短い夏を存分に楽しむ北欧の人々の情熱を感じました。
9日目(6月24日 Saturday)
朝食後、お土産を買いに出かけましたが、まだ夏至休みで閉めている店が多かったです。駅近くのスーパーでムーミングッズやチョコレートなどを買いました。
12時にチェクアウト。フィンエアーバスでヘルシンキ・ヴァンター空港へ。
17:15分発フィンエアー機で帰路につきました。機体にはフィンランドを代表するデザイナーマリメッコの花柄が描かれていました。
旅の興奮がまだ冷めやらぬ7月1日、ムーミン美術館で投函した絵葉書が、我が家に届きました。ムーミンの足元に M00MIN MUSEUM と記された消印が押されていました。
〜完〜