DC滞在中は天気に恵まれた。
日中は抜けるような青い空で、季節は紅葉の時期だった。とてもきれいなところだった。
観光の中心、モールと呼ばれる一画は、一端はキャピタル(国会議事堂)で、その反対側にリンカーン記念館、そしてポットマック川になる。これら線上の川側3分の1のところにワシントンモニュメント(尖塔)がそびえている。これらを結んだ一帯は広場となっている。DCにはこの尖塔より高い建物は立てられない条例がある。建国の父である初代大統領ワシントンに敬意を示しているためだそうだ。この尖塔は旅の間中ランドマークになった。そして、この広場の両側には博物館や美術館などが立ち並んでいた。
そこにある多くの施設はスミソニアン協会に属していて、入場はすべて無料であった。無料ではあるが、展示物の内容は実に充実していた。その中の一つである国立航空宇宙博物館には、航空宇宙にかかわるあらゆる分野の展示がされており、見学するのにまるまる一日あっても時間が不足した。
まず月の石に触ることから始まり、初の宇宙飛行船、世界の主たる旅客機、各国の戦闘機が競うようにあった。西側諸国のものばかりでなく旧ソビエト連邦のものさえ展示されていた。驚いたことに展示されている多くのものは使おうとすれば動く状態になっているという。
日本が米国を第二次世界大戦に参戦させる口実を与えた、あの真珠湾攻撃で使ったゼロ戦もあった。濃い緑色で胴体と羽根には日の丸のマークがあった。空の乗り物の展示がまるで百科事典のごとく、見ごたえのある博物館展示であった。
モールの夕焼けはことさら美しかった。さらに日が暮れるとモールは一段と美しさを増した。
第3代大統領ジェファソン記念館はローマのパンテオンのような建物で、ライトアップされ、闇を照らし幻想的でさえあった。広々としたモールは日中ばかりでなく夜のとばりが落ちた後も散歩するのに良いところだった。
ポットマック川を挟んでDCに隣接したヴァージニア州にあるアーリントン国立墓地にも出かけた。墓地の北側に硫黄島記念碑があった。その像は日本人である私には複雑な思いのするものであった。それは約ひと月間の激戦の末にやっとの思いで戦勝の星条旗を米軍の兵士が立てた像である。その戦いが米軍の日本侵攻の始まりであった。
アーリントン墓地の敷地は広く、おびただしいお墓があり、見学のためのバスがあり、それを利用した。ケネディ大統領のお墓には多くの人が詣でていた。無名戦士の墓の前には衛兵が警備していて、21歩ずつ規則正しく左右を往復して歩く姿が印象的だった。
ちょうど11時だったのだが、運よく衛兵の交替式も見ることができた。きびきびした歩調がそろった動きで素敵だった。
ワシントンDCの観光は想像以上に面白いところだった。何より歴史を学ぶのにとても良いところであった。DCにはまたぜひ訪れたい。