【旅のエッセイ】 ベトナムごはん紀行

期間:2018年3月2日~2018年3月8日
パーパスジャパン:迫田

GON-001335

世界のグルメたちをうならせる国はいくつかある。

フランス、イタリア、中国、日本などは誰でもその名前をあげる国だが、ベトナムをあげる人はそんなに多くない。でも、実はベトナムのご飯はとてもおいしいのだ。

中国料理の影響がないわけではない、いやいやかなりあると思うが、中華料理ほど脂っこくはないし、タイ料理ほど激辛でもない。さらに野菜やハーブ類を多用したヘルシーな料理が多い。

そういえば、ベトナムには太った人をあまり見かけないし、特に若い女性はスタイルがいい。
それは食事のせいではないだろうか?

ここ数年間、僕はベトナムへ行くことが多くなり、ご飯を食べているうちにこの国は美食の国だと思うようになった。それでいろいろと調べて、体験もしてきたのでベトナムごはんの旅を企画して旅の仲間と現地で食べ歩いてみた。

今回はその旅の紀行文をお届けしたい。

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ベトナムへは日本から直行便が飛んでいる。
最初の旅の目的地古都ホイアンへ行くために成田からダナンへと向かい、到着後は専用車でホイアンへと移動した。

ダナンは経済発展の著しい産業の都市であり、近年は多くの日本企業も進出している。フランス軍は最初はダナンを砲撃して、1882年にハノイを占領したことで歴史的には知られており、さらにダナンの近郊は米軍とのベトナム戦争の際は激戦地でもあったが、きれいに復興して都会になった。ダナンからホイアンまでは車で1時間以内で到着する。

ホイアンは日本とも縁がある古都で日本が鎖国をするまでは日本人が1000人ほど住んでおり、東西を結ぶ海のシルクロードとして交易で栄えた港町だった。今でも土台が石造りの古い橋が日本人の足跡として残されている。

ホイアンのご飯
最初の夜は旧市街地ではあるが、中心地からは少し離れたホテルにある評判の良いレストランへ出かけてみた。旧市街の中心地は大勢の観光客が訪れるので、たくさんのレストランが軒を連ねている。そのレストランもそれなりにおいしいけれど、あえてそこには行かなかった。

< シンシリティーレストラン >
小さなホテルの中にあるレストランで、繁華街からも遠く離れ混んでもいなかったので大したことなどないのでは?と最初は感じた。ところが食べてみるとなんのなんの出てくる料理のすべてが美味しかった。僕以外は初めての人がほとんどだから、

ホイアンの名物料理を中心にして注文してみたが食べた感想を少し述べてみたい。

まずはホイアン名物のホワイトローズから。米の粉で作った皮にエビのすり身をつめて蒸しあげてあるとてもシンプルな料理。透明な皮が白いバラのように見えるからその名前がつけられた。
こういう簡単な料理は実は美味しく作るのは意外と難しいもので、ホイアンの町ではどこでも食べられる料理だが、どこでもおいしいとは言えないものだ。ここのホワイトローズは美味しい、まるでエビワンタンを食べているようにも思える。

次に食べたご当地麺のカオラウもいけたし、揚げワンタンとエビの料理もバナナの葉に包んだ魚もいい味だった。

でも、最後の料理が一番だった。白身の魚を蒸したものに野菜のソースの付け合わせがあり、更にハーブの多い生野菜をライスペーパーに巻いて食べる。魚は英語のメニューではレッドスナッパーとあったけど、英語の意味のタイの仲間ではないと思う。とにかく白身で脂ののった海の魚は絶品だった。

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ホイアンの町は夜のとばりが下りるとその輝きを一段と増す。
旧市街地はいたるところにランタンが灯り、幻想的に町の様相が変化する。川沿いのカフェやレストランは色とりどりの光が水面に映え、鮮やかに町を彩る。特にランタン祭りの夜は世界中からの観光客で街はあふれ、裏通りまで人でいっぱいになり、かつての交易都市は、いまや観光の町となっている。

昼間、ホイアンの町をぶらつくといたるところにカフェがあるのがわかる。ベトナムはフランスの植民地時代の影響でコーヒー文化が根付いており、紅茶よりも一般の人はコーヒーを好む傾向にあるようだ。もっともはるか昔から蓮茶が良く飲まれており、それもこの国の名物の飲み物ではあり、お土産で買う人が多い。
フランス人は当初、本国からコーヒーの豆を送ってもらい飲んでいたのだが、あまりにも面倒になりこの地にコーヒー農園をつくることを思いついた。最初はうまくいかなかったようだが、高地に畑を作ってから栽培に成功したのである。ベトナムを旅すると水田が多くて平坦な土地だと思う人が多いが、実は平坦な土地は海側のところで、国土の三分の二は山岳地帯、高地にはたくさんのコーヒー農園があるのだが現在ではベトナムのコーヒーの生産量は世界第二位である。

街をぶらつきながら軽食としてフォーの美味しい店でランチを食べることになり、地元の人が奨めるところに行ってみた。店は街の真ん中にあり、昔からやっている老舗でお世辞にもきれいとは言えない作りで、威勢のいいおばさんが取り仕切っていた。クーラーなんてもちろんない、メニューは牛のスープのフォーしかない。日本では鶏のフォーのほうが有名だけどベトナムでは牛のフォーの店のほうが多いように思える。この店のフォーの味はとてもよく、汗を流しながら食べた、うまい。一杯が40,000ドンで約200円。

ホイアン2泊目の夜のご飯はクッキングスクールがやっている料理をいただいた。
ここはベトナム創作料理の味が自慢らしいが、本来は料理教室でおなじ場所でレストランとしてもやっている。それだけに小さなスペースしかなく、完全予約制であり、人気なだけに前から依頼しなければならない。最大でもせいぜい10数名がいいところで、7,8名で行くのが一番だろう。メニューは基本的にはお任せで、当日に仕入れが出来る最高の材料でメニューは考えられているようだ。つまり、プライベートシェフによる、プライベートディナーというわけだ。

シェフが料理の前メニューを説明して、その場で料理してくれるので調理の過程もよくわかる。鴨の燻製などフランス料理の影響だろうし、新鮮なマグロは日本料理の影響だろう。それをベトナム風にアレンジしてたくさんの野菜とともにいただいた。余りにもマグロが新鮮だったので、その入手方法も聞いてみたが、船頭から直接に仕入れているとの説明だった。本当に美味しかった。

僕たちは翌日にフエに移動した。
ベトナム最後の王朝である阮(グエン)朝は1804年に中国の清の皇帝から越南を正式の国号として認められ首都をフエに置いた。フエは王宮があり、いにしえの都であった。当時の首都だっただけにフランス人たちもここに館を構え、いまでもその屋敷のあとは5つ星のホテルとして利用されている。僕たちはそのホテルに宿を取ったが、フランス植民地時代の建物は当時の面影を良く残しており、快適な滞在を楽しめた。宿泊客の多くは欧州からの人たちで、ホテルの緑の芝生に作られたプールサイドでのんびりと本を読んだりして日光浴を楽しんでいたのが印象に残ったが、彼らはあくせくして観光ばかりはしていない。

フエはハノイやホーチミンほどには日本人観光客は訪れないが落ち着いた良い町で、先のベトナム戦争で米軍の爆撃で甚大な損傷を受けた王宮も修復が終わり、大勢の観光客でにぎわっている。フエの夜の繁華街は大変な賑わいだが、その近くにある小さなホテルのレストランへご飯を食べに行った。舗装もしていない狭い路地裏にある安いホテルは白人の観光客がロビーで休んでいた―こんなホテルの中にあるレストランなんておいしいのかなあ?--そんな思いで注文をした。

いかにも安そうなホテル内の普通の店だったが、これもとてもおいしいご飯だった。
最初にポメロサラダを注文した。ポメロはザボンの仲間の大きなかんきつ類で東南アジアに各地でとれる果物である。まあ、夏ミカンの大きなものだと思えばいい、果実が大きいので大変食べ応えがある僕の好物だ。これをサラダに使うのは東南アジアではめずらしくもなんともない。僕はこれをフィリピンの高級ホテルでも食べたことがあるが、サラダに入れるとおいしい。

ベトナム人は小さなイカをよく食べる、近辺の海岸でたくさん獲れるからだが、これがうまい。今回は小イカとたまねぎとキノコのソテーをいただいたが、絶妙の組み合わせだった。日本では考えられない料理だが、イカとキノコが調和してうまかった。

そのほか、お決まりのエビのソテー、牛肉と野菜の炒め物などすべて美味しい味付けだった。

フエの夜
街の中心地には夜だけ歩行者天国になる繁華街がある。この界隈はプチホテル、レストラン、カフェがたくさんあり、バックパッカーの定宿らしくヨーロッパ人がたむろしている。彼らの多くは個人客で、一つの町に1週間ほど滞在して、レンタサイクル、レンタルバイクで自由に観光を楽しんでいるが日本人はこんな旅行をする人はあまりいない。フエはベトナムに来たら、ぜひとも一度訪れて泊まってほしい町である。

僕はフエを後にして空路、首都ハノイへと向かった。
ハノイは1000年の都であり、中国からの大きな影響があったものの独立した王朝があり、タンロン城と呼ばれる王宮の跡は世界遺産に登録されている。ベトナムの南にはメコン河があり、北のハノイには紅河というおおきな流れがある。ハノイから中国国境は遠くない、紅河を溯ると中国の雲南省へと通じている。

ハノイ近郊は美味しいバナナができる。 特にモンキーバナナの味は定評があり、紅河のほとりはその産地である。

ハノイはフランス植民地時代の建物がたくさん残されており、いまでもそれとすぐわかる。 現在は高級レストランやカフェにも利用されていて、3階建てのフランス植民地時代の館をレストランにしたリークラブもそのひとつである。 ここはフランス料理も出すけれど、ここにきたらベトナム料理を食べるに越したことはない。 瀟洒な建物でいいサービスが受けられるこのレストランは僕のお奨めでもある。

ここはメニューにおすすめ料理は印がついているが、お奨めの料理はすべておいしかった。
特にエビ春巻きの味は忘れることが出来ないほどで、生春巻きでの揚げ春巻きでも甲乙つけがたいほどだった。 そのほか、白身魚の蒸したものはその火加減がよく、これもまた食べたいと思う。 メニューには英語で Snow Fish とあったけど、いったい何だろう? あとで辞書をひいてみたがわからなかった。 最後の鶏のつぼ焼きも堪能したし、締めのデザートのバナナのフリットもなかなかのものだった。

ハノイの中心地にホアンキム湖という市民のオアシスがある。
この池には150年ほど生きているという亀が住んでいたが、ついこの間死んでしまったそうだ。 市民たちは不吉な前兆だと心配したようだが、何事もなく平穏無事で、市民もほっとしている。 亀と言えば、ハノイ郊外は田んぼが多く水が豊かなせいもあり、すっぽんが獲れる。 日本で食べると高価な食材だが、ここではとても安い料金で食べることができる。 僕のお奨めはから揚げだが、土地の人は干してから焼いて食べるのが一番だという。 一度、ハノイへ来ることがあったらお試しください。

ハノイ2泊目の夜はドングスへ
Duong's は1と2があり、大変人気のレストランで最初の店が評判を呼び、とうとう2軒目をつくったようだ。 最初の店は車を入れないほどの小さな路地にあり、そこで営業をしているが毎晩大賑わいで必ず予約が必要なことは言うまでもない。 僕が訪れた時は欧米からのお客がほとんどで、アジアからの人はそうたくさん見かけなかった。それだけに従業員は英語が堪能だし、特筆すべきはサービスがとてもいい。

ここでもまず、春巻きを数種類食べたが、外れなどまったく無い。 ご飯の上に置いたエビも抜群で、マンゴーと野菜のサラダもいい味だった。 土鍋に豚肉のグリルをスープに入れて野菜とフォーをお椀に取って食べる料理は特にお奨めだ。 とにかくこのレストランは何でもおいしいので、ぜひとも一度は訪れてもらいたい。

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今回は他にも数件のレストランに行ったが、いずれも美味しい店ばかりだった。

自分の感想を言えば、やはりハノイは都会だけに味が洗練されており、さすがはベトナムの首都だと思う。やはり、レストランも競争は大事だ、さらに経済が発展してくるとそれにつれてお金を食べることに費やす層も増えてくる。そうするとレストランのシェフもがんばるようだ。ハノイはベトナムの地方のレストランよりも多少は高いけど、日本に比べると信じられないほど安い。

ベ ト ナ ム は 食 の 都 で あ る

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