チケットの入手がきわめて難しいバイロイト音楽祭に
永年の夢かなってついに行ってきました。ワーグナーが自作品だけを上演するために、北バイエルンの古都バイロイトの丘の上に建てた祝祭劇場で毎夏開かれる音楽祭には、世界中のワグネリアンが集ってきますが、この度彼の生涯最後の作品「舞台神聖祝典劇パルジファル」を聴く貴重な機会を得ました。最高水準のワーグナー歌手、オーケストラ、合唱団、それに木の床や椅子等独特の構造の劇場がかもしだす音響効果が相俟って、絶対に他所では味わえないワーグナー音楽の醍醐味に酔いしれました。
戦後導入された革新的な演出は、初期には激しいブーイングを浴びたそうですが、今では聴衆も馴らされたのか、パルジファルでは全く聞かれませんでした。ただ、シナリオは
大胆に変えられており、ここにワーグナーがいたらどう思うだろうかと心配な程でした。
その一方、古臭い昔の物語をただ忠実に再現することに満足できず、現代的テーマを盛り込んでいる演出家達の意図も理解でき、複雑な思いでした。ワーグナー愛好家の方には生涯の想い出に、折角門戸の開いたバイロイトを訪ねることを是非お奨めします。