日本では絶対に得られない光景を求めて
フィヨルドの絶景トレッキングを計画し、ノルウェイへ行くためにパーパスジャパンに相談した。
昨夜は23時、白夜の陽がようやく暮れる頃、ベルゲン空港に到着した。ホテルでの朝食後、旧市街に散歩に出掛ける。なかなか趣のある佇まいだった。
昼頃、バスステーションに向かい、オッダ行きのバスに乗る。930系統。チケットは運転手からクレジットカードで買える(40+61NOK)。ノルウェイはキャッシュレス社会だ。それにEV車の比率が非常に高いらしい。事実テスラをよく見掛けた。バスは2台出たが、終点まで行くのは1台のみだった。時おり左右に湖が現れる道を行く。
運転手が変わり、バスはフェリーに乗り入れ、対岸に渡る。フェリー内には軽食コーナーやトイレがあり、皆んなバスを降りて自由にしている。オッダに着いて、ホテルにチェックインする。居ながらにしてハダンゲルフィヨルドを眺められる部屋だった。こんな内陸地で鳴いている鳥もカモメだ。
トロルトゥンガの登山口へのシャトルバスはオッダバスとオッダタクシーの2社が運行していて、日本からオンラインで予約したが、予約なしでもあぶれて乗れないということはなさそうだった。この日も僕の他には2人が乗り込んだだけで空いている。急傾斜の斜面をひとしきりジグザグに登ってから同高度を谷の奥へ向かうと、やがて終点のP2に着く。やはり、マイカーで来ている人が圧倒的に多いようだった。ここからもう一段上のP3までオッダタクシーの小型シャトルバスが出ていて、それも日本から予約を入れていた。帰りはいつ着けるかわからないので予約は入れていない。車は15人乗りのベンツで、日本では見たことのない車種だ。
あっという間に、歩くと飽き飽きするであろう車道をこなして車道の最終地P3付近へ。同乗のヨーロッパ人は降りると、さっさと歩き始める。道標にはトロルトゥンガまで10kmとある。僕はゆっくり支度してからしんがりに歩き始める。すぐに開け、ほぼ森林限界で矮性のシラカバの生える中を行く。川を橋で渡ったり、岩盤の張った場所を行ったりする。やがて急な登りとなるが、それも30分くらいで終わり、皆んなここらで遠くを眺めながら休憩を取っている。まずまずの良い天気だ。
最後は岩盤の張った、ほぼスラブ帯と呼んでよい地形になる。そこから高度は変わらないものの、細かいアップ&ダウンの続く道となり、距離は稼げるものの、長く感じられてならない。池が3〜4現れ、雪が残っていてその上を歩く場所も現れた。やがて右手下に氷河湖が見下ろせるようになる。ここは海と直接繋がっているフィヨルドではないようだ。対岸に目的地が見え始めたのだろうけど、どれがそれなのかわからない。池を左に見て大きく右へ回り込むようになるともうすぐで、やがて前方にたくさんの人が休んでいるのが見えてくる。それはいきなり明晰な形で現れた。写真で見知っている光景ではあるが、わかっていてもインパクトがある。人々が列をつくって到達証明写真を撮り合っている。
帰路は長かったが、先の対岸の地からはトロルトゥンガの場所を特定できるようになっていた。P3には3時少し前に着き、もう少しでタクシーが来るという just in time だった。チケットは下の発着所脇の小さな建物の中でカード清算できた。100NOKと下りは少し安い(上りは150NOK)。オッダの街へのバスは1時間ほど待たねばならなかった。
街へ戻って中華料理店のテラス席でエスニックな味付けの焼きそば(なぜか平打ち麺)とビール(クローネンブルク)を注文する。ノルウェイは物価高で有名だが、この焼きそばが258NOK(40cmくらいの大皿で、一人ではけっこう食べ応えがあるんだけど)、カールスバーグの500mlビールが102NOK、しめて360NOKで、日本円だと約4680円!これから天気は悪くなるらしい。でも、一番の長丁場の天気がまずまずだったから、良しとせねばならないだろう。
(この日のiPhoneのヘルスメータは、26.2km、203階、35246歩)
酷い降りではないが、やはり雨だった。760系統のバスはローゼンタールまでで、その先はベルゲンまでずっとフェリーらしい。着くと、うまく接続していて、乗り換えるとすぐに出航した。沖縄の離島の高速船のようなものだった。ここでも船内の軽食コーナーで船員がカード清算してくれた(439NOK と往路のバスに較べると断然高い)。
ベルゲン港のフェリーターミナルのロッカーに荷を預け(クレジットカードで可)、フロイエン山に向かう。世界遺産ブリッゲンの裏手の住宅街の道を登って行く。やがて鬱蒼とした森の中の登山道に吸収される。地元の人がけっこうたくさん昇り降りしている。疲れぬようゆっくり歩く。港にはどうやら巨大な豪華客席が停泊しているようだった。北欧の街は公衆トイレが殆どない。あってもチップ制で、小銭が必要だ。基本、飲食店を利用することになる。
荷をピックアップして、空港に向かい、スタヴァンゲルまで飛行機に乗る。ほんの30分ほどのフライトだった。
(この日のiPhone のヘルスメータは、14.1km、22階、21881歩〜フロイエン山は標高400mなので130階ほどになるはずだけど、車の通れるような広くて傾斜の緩い道だったので垂直の階数ではなく、水平の歩数になったようです)
朝起きると、雨だった。散歩に出るが、風もあって、気温も低く、気分は暗くなってしまう。
最初から日にちを決めてハイキングなんてすべきではない。ここも旧市街は趣のある場所だった。港にはやはり巨大な豪華客船が停泊している。パーパスジャパンが手配してくれたハイキングバスは10時の集合なので、部屋でのんびり休養する。バスには10人ほどが乗り込んだ。フェリーに乗るのではなく、海底トンネルを通る。趣きはないが、悪天候でも安全、楽に、また早く対岸に渡れる。
1時間ほどで登山口に着く。トイレを済ませて歩き始めるが、短パン姿の人もいて驚かされる。僕は薄手のフリースのズボンの上に雨具だというのに。今日も汗をかかぬほどにゆっくりと歩く。こっちの人は誰もレイングローブをはめていない。日本では富士山に弾丸登山をする外人が問題になっているが、彼らは(もちろん、全員ではない)母国でも同じ調子のようだ。
僕は悪天候でも対応できる装備を日本から用意してきているが、歩いていて面白いものではない。途中、道が川と化しているところがあり、本当の川を渡るのに大きく迂回しなければならないところもあり、大きな水溜まりのできているところもあり、晴れていれば美しい光景であっただろうに残念だった。それでもたくさんの人が下山して来るのに出会った。全体に右へ回り込んで行き、開けた岩場を登り切ると目的地だが、完全な霧の中で、視界も悪い。角へ行って下を覗き込んでみてもスカイツリーがすっぽり収まる600mもの高差のある空間が空いているとは思えない。観念的に頭の上でわかっているだけ。
帰路は静かな山道を愉しめた。ブーツが濡れて重くなっているのが気になるが、身体はなんともない。まだもう1日ある。
(この日のiPhoneのヘルスメータは、16.2km、104階、23771歩)
ホテルをチェックアウトして外へ出ると、雨は降っておらず安堵する。荷をバスステーション隣りの鉄道駅のロッカーに預ける。バスステーション7番からハイキングバスに乗り込む。今回も10人弱と空いている。バスは幹線を外れると岩山に挟まれた谷間を行き、湖を左右に見ながら荒涼とした高原帯を上り詰めるとさらに小さな池が次々と現れ、下りにかかるとやがて下に駐車場が見え始めた。ここでトイレを済ませて登り始めるが、すぐに岩に打たれた杭に掛かる鎖を手繰って登ることになる。けっこう急で力を要する。登り切ると、向こうから緑の谷が下に現れ、いったんそこに向かって降りる。流れを渡り、登り返す。と、避難小屋が現れる。雨は降っても霧雨程度だが、気温はかなり低く、5℃ ほどだろう。
ここでも少し下って先より大きな川を橋で渡り、右へ回り込んで、尾根状を登り詰める。右手下にリーセフィヨルドの末端が見えてくる。そこを上がったところからはケルンと「T」の字の赤ペンキマークが目印となる岩盤の上の歩きとなる。「T」のマークはトロールトゥンガのときと同じで、その頭文字かと思ったけど、そういうわけではないようだ。歩程のアップ&ダウンも大きくない。
最後は右肩下がりの斜面となるが、ビブラム底の登山靴ならスリップすることはないだろう。道標の立つすぐ先で雪の上に降り立ち、岩溝を右に行くと、目的地のシェラーグボルテンで、たくさんの人がいて、岩の上に乗って写真を撮っていて(裏側から簡単に登れる)、完全に遊園地化していて神秘性は感じられない。それに、思っていたよりスケール感のないものだった。少し幻滅する。で、近くのフィヨルドを見下ろせるところまで移動する。そこは人も少なく、滝(シェラーグフォッセン)も見え、水面までプレーケストレーンよりもあるので(7~800m)、昨日の借りを返せた感じで良かった。ここでのんびり時間を使ってから戻る。駐車場まで余裕で帰ることができた。
スタヴァンゲルのバスステーションを降りて、荷をロッカーから引き出してバスで空港へ向かう。明日はアムステルダム行きの便が朝早いので、空港近くのホテルに泊らねばならないのだ。
(この日のiPhoneのヘルスメータは、14.3km、165階、22095歩)
<アドバイス>
●天候はどうしようもないが、中止もあり得る(最初から不参加ーー途中棄権だと、レンタカーならその時点で街へ帰れるが、帰りの時間の決まっている一便しかないバスでは、現地での時間潰しが難しい)
●登山として難しくはないが、最悪の場合を考えて装備を整える
●3つの連チャン・ハイキングは体力的にきつい。間に休養日を設ければ別だが、トロルトゥンガとフィヨルド観光、プレーケストーレン&シェラーグボルテンとフィヨルド観光とするのが一般的